高度生殖医療について
タイミング指導や人工授精でも妊娠できなかった患者様は、高度生殖医療をお勧めしております。
●当院の高度生殖医療の特徴
最近では、一般的に顕微授精を多く実施している医療機関が多く、もちろん当院でも行っておりますが、当院では、なるべく自然に受精できることを重視しております。よって、精子の処理に力をいれ、一般の体外受精の受精率を上げることにより、顕微授精を行わなくても体外受精できちんと受精することができております。自然に受精ができれば、費用もかかり患者様の負担も大きくなる顕微授精を行わなくてすみ、卵や精子にも負担が少なくてすみます。
●体外受精
体外受精は、卵巣内で育った卵子を体外に取り出して受精させ、子宮内に戻す治療法です。
通常、体外受精は、卵管に異常がある場合(卵管閉塞、卵管水腫等)や、精子に異常があり、自然妊娠が期待できない場合の治療法です。
しかし、精子に異常がない場合(原因不明不妊症)でも、卵の卵管への取り込み障害(ピックアップ障害:検査ではわからない)等の卵管が原因で起こる不妊症の方や、受精障害のある方にも体外受精はとても有効です。
方法には、一般の体外受精(精子と受精卵をともに培養し、自然に受精させる)と顕微授精(精子を針で卵子に注入する)の2通りがあります。ともに受精は体外で行われますが、受精卵を子宮に戻した後は、通常の妊娠を同じ経過をたどります。最近の米国の統計では、体外受精児のIQ、及び先天異常、奇形の発生率は自然妊娠と比べ差異はなかったと報告されています。自然妊娠、人工授精と比較して、体外受精は最も妊娠率の高い治療法です。
●通常の体外受精
精子を洗浄し、運動精子のみを集めて体外受精に使用します。 体外受精では、1つのディッシュ(お皿)に卵と精子を同時に入れ、自然に受精を行わせます。
このとき、精子の数や運動率が十分でないと、卵を受精させることができません。(運動精子濃度 200×104/ml)
●顕微授精
運動性の数が不足している場合、顕微授精を行うことがあります。
この場合は、運動精子が1つで、1個の卵を受精させることが可能です。体外受精に比べて、精子の状態が悪い方でも受精可能なことは大きなメリットですが、卵に大きな負担がかかります。
運動精子が全くいない場合は、低張液に精子を入れて、生存精子を選び出して(HOSテスト)顕微授精を行うことがありますが、受精率は運動精子に比べて低くなります。
精液内に精子がいない場合(無精子症)、手術により精巣の組織を取り出し、その中に精子が見つかれば精巣内精子を利用して顕微授精を行う場合があります(TESE)。精巣内精子はほとんど運動性がなく、受精率は通常の顕微授精より低くなります。
顕微授精児の奇形率、IQ等は自然妊娠児と差異は無いとの報告がありますが、男児が生まれた場合には、無精子症、乏精子症が遺伝する可能性があります。
●胚移植
採卵2から5日後に受精卵を子宮に戻します。子宮に戻す受精卵の数は患者さんと相談して決めますが、多胎を防ぐために1から2個に制限しています。2個の胚を子宮に戻した場合には多胎妊娠が増加するので、子宮に戻す胚の数は患者さんの意見を尊重しながら、慎重に検討します。子宮口が狭い等の理由でチューブが入りにくい場合は、直接子宮に針をさして受精卵をもどすこともあります。胚移植後、30分は安静にし、再度診察を受けてからお帰りいただきます。胚移植後、出血や痛みが無ければ入浴できます。
卵巣の腫れがひどい場合は、胚移植をせず、全ての受精卵を凍結する場合があります。
これは、受精卵が着床した場合、赤ちゃんが、お母さんの卵巣を刺激して、さらに卵巣が大きく腫れてしますのを防ぐためです。妊娠せずに、生理が始めると卵巣の腫れは速やかに治ります。卵巣が元に戻ったら、子宮内膜を着床しやすい状態にして、凍結した受精卵を子宮に戻し治療再開することができます。
●受精卵の凍結融解胚移植
受精卵は凍結して保存することができます。
胚移植をして残った受精卵がある・卵巣が大きく腫れている・子宮内膜の厚みが胚移植に適さない等の場合、受精卵を凍結する場合があります。凍結受精卵の妊娠率は新鮮受精卵の胚移植より若干下がります。また、凍結により1~2割の受精卵が変性してしまいます。
一度凍結した受精卵は、定期的(一年ごと)に保存を続ける意思を患者さんに確認させていただきます。受精卵の凍結は、最長5年間、又は奥様の閉経までとさせていただいております。
●胚盤胞移植
これまで採卵2から3日後に胚移植を行うことが一般的でしたが、胚を育てる新たな培養液の考案により、採卵5から6日後に胚移植をすることが出来るようになりました。以下に、その長所と短所について示します。
<長所>
胚の生育状態は3日目でとそれ以後では大きく変化するため、5から6日目まで培養を続けることで、より状態の良い胚を選択することができます。従って多数(3個以上)の優良胚がある場合、より妊娠しやすい胚を選択するに有効です。5日目に胚盤胞になった胚を移植した場合は妊娠率が高いので、少数の(1,2個)の胚を移植することで妊娠率を下げずに多胎妊娠(双胎、品胎)が予防できます。
<短所>
受精卵の中には途中で成長が止まってしますものも多く含まれ、採卵後5から6日目に胚盤胞になる胚は、受精卵の3から4割です。従って、受精卵が多数あっても良い状態の胚が得られなければ胚を移植することが出来ないこともあります。また、培養環境が体内と異なるために、長期間体外培養することによって、胚が何らかの影響を受ける可能性もあります。最近の報告では妊娠率は胚盤胞移植でも2から3日目の胚移植でも大きく変わらないことが報告されています。さらに、胚盤胞移植では一卵性双生児の出生率が増加するという報告もあります。
●二段階移植
2から3日目の胚移植と胚盤胞移植を同周期に行うのが二段階移植です。
通常は採卵後、2から3日目に1個の胚を移植し、残りの胚はそのまま培養を続けます。5日目になって残りの胚が胚盤胞になったら、さらに1個の胚盤胞を移植します(計2個)。この方法の長所は、2から3日目に移植を一度するので、例え胚盤胞にならならなくても胚移植のキャンセルがない、胚盤胞になった胚を移植できれば妊娠率を上げられる等があります。短所としては、2回胚移植をするため費用が高くなる、通院の回数が増える等があります。詳しく、当院のエンブリオロジストにお尋ねください。
●透明帯開口術
胚は透明帯という膜に囲まれていますが、着床時は、その膜を破って子宮内膜に着床します。しかし、中には透明帯を破ってうまく外に出られないものもあります。それを助けるのが透明帯開口術で、胚移植前に透明帯の一部分に小さな穴を開けてあげます。
●子宮内フローラ検査
子宮内フローラ検査は、子宮内または腟内におけるラクトバチルス属菌の占有率を調べる検査です。
子宮内または腟内のラクトバチルス属菌の占有率は、妊娠成績と相関があるとの報告があります。子宮内膜上の粘液(子宮内腔液)または腟内擦過物に含まれる細菌の16S rRNA遺伝子を次世代シークエンサー(NGS)を用いて解析し、ラクトバチルス属菌の割合を推定します。
※Varinos株式会社ホームページの「子宮内フローラ検査」より。
●ERA®・EMMA・ALICE検査
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ERA®検査(子宮内膜着床能検査)とは?
世界で初めて開発された、着床の窓を調べるための検査です。ERA®検査を利用することで、ご自身に最適なタイミングで胚移植を行うことができます。
EMMA検査(子宮内膜マイクロバイオーム検査)
健康な子宮内膜には乳酸桿菌が豊富に存在します。
EMMA検査では、子宮内膜細菌叢を評価し、子宮内膜細菌叢のバランスを整える最善のプロバイオティクス治療を推奨し、妊娠の見通しを高めます。ALICE検査(感染性慢性子宮内膜炎検査)
妊娠率を高めるために、慢性子宮内膜炎の原因菌を検出します。
※詳しくはアイジェノミクス・ジャパンのホームページをご覧下さい。
また、検査される方には、当院で詳細をお伝えしております。